痕跡──戦後美術における身体と思考(2)
この展覧会は、1.表面 ─ SURFACE 2.行為 ─ ACTION 3.身体 ─ BODY 4.物質 ─ MATERIAL 5.破壊 ─ DESTRUCTION 6.転写 ─ TRANSFER 7.時間 ─ TIME 8.思考 ─ IDEA の八つのセクションで構成されている。
1. 表面 ─ SURFACE
- ジャクソン・ポロック 「カットアウト(1948-50)」
- ルーチョ・フォンタナ 「空間概念(1962)」「空間概念ー期待(1961)」
- アルベルト・ブッリ 「赤 プラスティック(1964)」
- ロバート・モリス 「無題(1972)」
- イヴ・クライン 「火の絵画(1961)」
- 嶋本昭三 「作品(1954)」
- 吉田稔郎 「SEP(1953)」
- 村上三郎 「作品(1957)」
- 斉藤義重 「作品7(1960)」
- 山内重太郎 「作品5(1958)」
- 李禹煥 「突きより(1973)」「刻みより(Cut Up)(1972)」
が選ばれている。(画像は、アルベルト・ブッリ「赤 プラスティック」)
これらの作品は支持材として選ばれた、カンバス、ベニア板、フェルト、プラステック、木の板、紙、和紙などが、切り裂かれ、引っ掻かれ、焦がされ、溶かされ、燃やされ、裏返しにされ、穴をあけられ、剥ぎ取られている。ここでは、絵を描く/絵の具を塗るという行為は、破壊されるためにだけ存在する。作家たちは作品の奥底からゆっくりと立ち現れてくるはずの真理を、カンバスの向こう側から強引に引きずり出そうとしていたのかもしれない。それは、たとえば戦争という破壊から新しい世界を創造する転換行為であるはずだ。
第二次世界大戦後、多くの作家たちが絵画の表面に傷をつけることによって、新しい表現を模索した。彼らは競うようにカンヴァスを切り裂き、新聞紙で作った画面に穴をあけ、パネルの表面を焦がして誰も見たことのない絵画の創造を試みた。これまでイメージが描かれる前提として疑われることのなかった絵画の表面は、切る、突く、焼くといった攻撃の対象となった。通常の絵画とかけ離れたこれらのイメージになんらかの意味を見出すとすれば、それは作家の行為の痕跡として成立している点に求められよう。痕跡を主題とする展覧会の導入として、本セクションでは1940年代後半以降、相互に無関係に、さまざまな作家たちが表面に残した「痕跡」を紹介する。1950年前後、ヨーロッパ、日本そしてアメリカで類似した実験が繰り返されたことは、このような問題意識が当時多くの作家に共有されていたことを暗示している。さらに60年代以降、アンチフォームやもの派といった動向に連なる作家たちによる関連した作例は、この問題の射程の広がりをうかがわせる。(痕跡展カタログより)
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