2004年12月22日(水曜日)

言葉なき歌

カテゴリー: - artNOMAD @ 00時53分10秒

中原中也が好きだが、宮澤賢治にはかなわない。
中也もそれを分かっていたと私は思う。
そのことをそのうち書きたいと思っています、、、。

言葉なき歌

あれはとほいい処にあるのだけれど
おれは此処で待つてゐなくてはならない
此処は空気もかすかで蒼く
葱の根のやうに仄かに淡い

決して急いではならない
此処で十分待つてゐなければならない
処女の眼のやうに遥かを見遣つてはならない
たしかに此処で待つてゐればよい

それにしてもあれはとほいい彼方で夕陽にけぶつてゐた
号笛の音のやうに太くて繊弱だつた
けれどもその方へ駆け出してはならない
たしかに此処で待つてゐなければならない

さうすればそのうち喘ぎも平静に復し
たしかにあすこまでゆけるに違ひない
しかしあれは煙突の煙のやうに
とほくとほく いつまでも茜の空にたなびいてゐた

『在りし日の歌』中原中也


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